
この記事は、休んでいるはずなのに疲れが抜けない経営者に読んでほしいと思って書きました。
休憩のつもりでスマホを開いた5分は、頭にとって休みになっているでしょうか。
体は椅子に座って止まっていても、頭の中では来週の見積もりや、スタッフへの伝え方を考え続けている。経営者の疲れが抜けにくいのは、体ではなく、頭が休めていないからかもしれません。
UNIBRAND代表の栢原です。このコラム「体と心から経営を整える」の3回目は、起きている時間の休み方です。前回の睡眠の回で予告した、朝の光と寝る前の1時間、昼の短い仮眠、ヨガニドラ(横になって深く休む方法)を、研究と私自身の毎日をもとに紹介します。
この記事でわかること
- 体の休みと「頭の休み」は別もの(研究から)
- 朝・昼・夜に1つずつ置く「休む場所」(今日からできること)
- 昼の短い仮眠と、スマホを置く小休憩
- 横になって深く休む「ヨガニドラ」と、研究で分かっていないこと
休めていないのは、体ではなく頭かもしれない
休むというと、座る、横になるなど、体を止めることを思い浮かべる方が多いと思います。けれど研究では、もうひとつの休みが注目されています。仕事が終わったあと、頭が仕事から離れていることです。研究の言葉では「心理的な切り離し(ディタッチメント)」と呼ばれています。
起業家55人に、386日分の日記をつけてもらった研究があります。考えることが多い日や、気持ちを使う日は、夜になっても頭が仕事から離れにくくなっていました(解決策を考え続ける、気になってくよくよする)。そして、翌朝の調子が下がっていました。
Wach, D., Stephan, U., Weinberger, E., & Wegge, J. (2021). Entrepreneurs’ stressors and well-being: A recovery perspective and diary study. Journal of Business Venturing, 36(5), 106016.
55人と少ない人数で、多くは本人の答えをもとにした研究です。「関係がある」ことを見たもので、原因とまでは言えません。
働く人3万8千人分(86本の研究)をまとめた研究でも、仕事から頭が離れている人ほど疲れが少なく、睡眠や気分も良い傾向がありました(Wendsche & Lohmann-Haislah, 2017, Frontiers in Psychology)。一方で、仕事の成績との関係はごく小さく、離れすぎると、新しいアイデアを出す力(創造性)や、まわりを助ける行動とは、むしろマイナスの関係も見られました。ですから「休めば成績が上がる」とは言えません。言えそうなのは、頭が仕事から離れる時間がある人ほど、疲れが抜けやすいということです。
経営者は、考えることも、気持ちを使うことも多い仕事です。疲れが抜けないまま、翌日の判断や、スタッフへの言い方に入ってしまうこともあります。


私も、体は休んでいるのに、頭が仕事から離れない日があります。今は、目の前のことに集中するようにしています。たとえば、子どもの話を聴くこと。聴いている途中で仕事のことが浮かんだら、それに気づいて、子どもの話に意識を戻します。
これは、1回目で紹介した「気がそれたら、気づいて戻る」という考え方と同じです。座って瞑想する時間がとれない日でも、人の話を聴く時間が、頭を仕事から離す時間になるのかもしれません。
今日からできる:朝・昼・夜に「休む場所」を1つずつ
詳しい話の前に、おすすめしたいことを先にまとめます。休む時間を「空いたらとる」のではなく、明日の予定に、休む場所を先に書いておくことです。

- 朝:起きたらカーテンや窓を開けて、光を入れる。体を少し動かしてから、パソコンを開く
- 昼:大事な午後の予定の前に、10分ほど目を閉じる。休憩中、スマホは伏せて置く
- 夜:寝る1時間前に、仕事の画面を閉じる時刻を決める
- 横になれる日は:10分前後、横になって深く休む(ヨガニドラなど)
体を止める休みと、頭を仕事から離す休みを、1日に3か所置くイメージです。毎日きっちりでなくてかまいません。まずは明日の手帳かカレンダーに、1つだけ書いてみるところからで十分です。なお、これは研究で効果を確かめた「組み合わせ」ではなく、このあと紹介する研究と国のガイドをもとに、私が考えた工夫です。

気をつけたいこと
- どれも無理のない範囲で行ってください。持病がある方、心の不調で治療中の方は、始める前に医師に相談してください。
- 日中の強い眠気や、眠れない状態が続くときは、自分で何とかしようとせず、医師に相談してください。
朝:窓を開けて、体から1日を始める
国のガイドでは、日中にできるだけ日光を浴びると体内時計が整い、夜に眠りやすくなる、とされています(厚生労働省, 2024「健康づくりのための睡眠ガイド2023」)。朝に光を入れることは、その日の夜の準備でもあります。
起きてすぐスマホでメールを開くと、体より先に、頭が仕事に入ってしまいます。カーテンを開けて光を入れ、体を少し動かしてから仕事を始める。順番を入れ替えるだけの工夫です。

私は週に2〜3回、朝5時15分から5時30分ごろに、リビングの窓を開けて10分くらいヨガをしています。やった日は、心のすっきり感が違うと感じます。ただ、正直に言うと、ヨガができるのは早起きできた日だけです。だから、このすっきり感がヨガのおかげなのか、早起きできた充実感なのかは、自分でもよく分かりません。
ここで言いたいのは、ヨガの効果ではありません。私の場合は、窓を開けて体を動かすことが、1日を「体から」始めるきっかけになっています。体を少し動かすことなら、ヨガでなくてもかまいません。

昼:10分の仮眠と、スマホを置く小休憩
昼ごはんのあと、午後の打ち合わせでまぶたが重くなる。そんなときの休み方です。
短い仮眠は「10分」が目安
前の晩の睡眠を約5時間に削った翌日の午後3時に、5分・10分・20分・30分の仮眠を比べた研究があります。10分の仮眠がすぐに効き、その効果は最長で155分続きました。30分の仮眠では、起きた直後にぼんやりする時間がありました。
Brooks, A., & Lack, L. (2006). A brief afternoon nap following nocturnal sleep restriction: Which nap duration is most recuperative? Sleep, 29(6), 831–840.
オーストラリアの健康な若い成人24人、それもふだん昼寝をしない人を対象にした実験です。仮眠の研究11本をまとめた研究では、昼の仮眠で頭の働き、特に目のさえ方が約2時間よくなっていました。ただし効果は小さめで、ほとんどが実験室での研究です(Dutheil ほか, 2021, International Journal of Environmental Research and Public Health)。国の以前の指針(睡眠指針2014。今は2023年版のガイドに置き換わっています)でも、「午後の早い時刻に30分以内の短い昼寝」が、眠気による作業の効率の改善に役立つとされていました(厚生労働省, 2014)。


私は、毎日決まって昼寝をしているわけではありません。眠くなったときだけ、ソファで20分くらい寝ています。
私の20分は、研究で決まった長さではありません。上の研究からは、長くても30分までを目安にするのがよさそうです。仮眠は、夜の睡眠の代わりにはなりません。長い昼寝や夕方の昼寝は、夜の眠りに響くことがあります(厚生労働省, 2024)。眠くなければ、無理に寝なくてかまいません。
経営者なら、午後の商談や大事な打ち合わせの前に、車や応接室で目を閉じる10分をとってみるのもひとつです。
休憩中のスマホは、頭の休みになりにくい?
10分以内の小休憩についての研究22本(2,335人)をまとめた研究があります。休憩のあとは元気さが増し、疲れが減っていました(効果は小さめ)。一方で、仕事の成績ははっきりとは上がらず、頭を使う作業のあとでは差がありませんでした。休憩が長いほど、成績の伸びは大きくなっていました。
Albulescu, P., Macsinga, I., Rusu, A., Sulea, C., Bodnaru, A., & Tulbure, B. T. (2022). “Give me a break!” A systematic review and meta-analysis on the efficacy of micro-breaks for increasing well-being and performance. PLOS ONE, 17(8), e0272460.
気分はすべて本人の答えで、偏りのおそれが低い研究は22本中4本でした。10分以内の休憩は「気分を戻す」には役立ちそうですが、頭をたくさん使ったあとの疲れには、それだけでは足りないのかもしれません。
では、その小休憩にスマホを見ると、どうでしょうか。休憩中にスマホを使った学生は、紙やパソコンで同じ休憩をした学生より、休憩後の課題の成績が低かった、という研究があります(Kang & Kurtzberg, 2019, Journal of Behavioral Addictions)。アメリカの大学生414人が、言葉の並べ替えの課題を1回行った実験で、メッセージの確認など、ふだんのスマホの使い方までは調べていません。

休憩中はスマホを見ないほうがいい。それは知っているのですが、私もつい見てしまいます。
見ないと決めても、手は伸びてしまうものです。だから、休憩の間はスマホを伏せて置く。昼休みに外の光を見るだけでも、画面から目を離す時間になります。
夜:寝る前の1時間で、頭を仕事から下ろす
国のガイドでは、寝床に入る前の少なくとも1時間は、家事や仕事に追われずリラックスする時間にすることが勧められています。お風呂は寝る1〜2時間前に。眠れないときは無理に眠ろうとせず、いったん寝床を出ることも勧められています(厚生労働省, 2024)。
最初に紹介した起業家の研究では、考えることが多い日ほど、夜に頭が仕事から離れにくくなっていました。忙しかった日ほど、仕事の画面を閉じる時刻を先に決めておくのもひとつの方法です。ただし、どれかひとつを変えたら必ず眠れる、というものではありません。夜の過ごし方や、寝る前の5分で明日を紙に置くやり方は、前回の睡眠の記事に詳しく書いています。
横になって深く休む:シャバーサナとヨガニドラ
ヨガのレッスンの最後の「シャバーサナ」
ヨガのレッスンでは、最後に仰向けに横になって休む時間があります。シャバーサナと呼ばれています。

ヨガの先生をしていたころ、シャバーサナでは「体がマットに沈んでいくような感じ」と声をかけていました。
同じように横になって休む方法に、ヨガニドラがあります。似て見えますが、この2つは少し違うものです。ここからは私の体験ではなく、研究をもとにヨガニドラを紹介します。
ヨガニドラとは
ヨガニドラは、仰向けに横になり、音声の案内に合わせて、体の部分に順に意識を向けたり、呼吸を感じたりする休み方です。眠るのではなく、意識を保ったまま深く休むことを目指します。英語圏では、似たやり方が「NSDR(眠らずに深く休む)」とも呼ばれています。
ドイツの362人を、11分のヨガニドラ、30分のヨガニドラ、10分の音楽、何もしない、の4つのグループに分け、2か月続けてもらった研究があります。11分のグループでは、ストレスや不安などが、何もしないグループより改善しましたが、効果は小さいものでした。睡眠の質そのものには、はっきりした差は出ませんでした。
Moszeik, E. N., Rohleder, N., & Renner, K.-H. (2025). Stress and Health, 41, e70049.
約8割が女性、平均40歳で、オンラインの音声を使い、多くは本人の答えをもとにした研究です。
ヨガニドラの研究73本をまとめた2025年の分析では、ストレスや不安が下がる結果が多い一方で、質の低い研究が多く、効果は大きく見えすぎている可能性がある、と著者自身が書いています(Ghai ほか, 2025, Annals of the New York Academy of Sciences)。睡眠についての比較試験は、まだ6本・244人と少ない状況です(Dutta ほか, 2025, Journal of Integrative and Complementary Medicine)。国のガイドも、静かに行うヨガや瞑想、腹式呼吸などを寝る前のリラックス法として紹介しつつ、「全ての人に効果が保証されたリラクゼーション法はない」としています(厚生労働省, 2024)。
ですから、ヨガニドラは「よく効く休み方」ではなく、「選べる休み方のひとつ」くらいに受けとめるのがよさそうです。
やってみるなら
- 昼休みや夜に、横になれる場所で10分前後
- 音声の案内を使う
- 途中で眠ってしまってもかまいません
- 合わないと感じたら、無理に続けなくてかまいません
- 無理のない範囲で。持病がある方、心の不調で治療中の方は、始める前に医師に相談してください

よくある質問
Q. 昼寝をすると、夜に眠れなくなりませんか?
長い昼寝や夕方の昼寝は、夜の眠りに響くことがある、と国のガイドに書かれています(厚生労働省, 2024)。とるなら、午後の早い時刻に短く。上で紹介した研究では、10分の仮眠がすぐに効いていました。
Q. 休もうとしても、仕事のことが頭から離れません
起業家の研究では、考えることが多い日ほど、夜に頭が仕事から離れにくくなっていました。離れないのは、意志が弱いからとは限りません。頭にあることを紙に書いて置いておくやり方は、前回の記事で紹介しました。

休むのが下手だった時期のことは、あまり覚えていません。ただ、眠れない時期はありました。今は、ONとOFFの切り替えは上手なほうだと思います。すぐに眠れますし、走るようにもなりました。起きている時間の集中力も、高い気がしています。
何がよかったのかは、私にも分かりません。ひとつの例として読んでいただければと思います。
Q. ヨガニドラは、どこで習えばいいですか?
音声の案内を使うのが手軽です。合わなければ、ほかの休み方を選んでかまいません。
まとめ:休むことも、経営の準備
休めば判断がいつも正しくなるわけでも、成績が上がるわけでもありません。研究には、まだ分かっていないことも多くあります。それでも、頭が仕事から離れる時間がある人ほど疲れが抜けやすい、という傾向は見えてきています。
経営者は、仕事が終わっても、頭の中で問題を解き続けがちです。だからこそ、体を止めるだけでなく、頭を仕事から離す時間を、1日の中に先に置いておく。休むことは、翌日の判断と、人への言い方の準備です。まずは明日の予定に、3つのうち1つだけ書いてみませんか。
明日できること
- 朝:カーテンや窓を開けて光を入れ、体を少し動かしてからパソコンを開く
- 昼:大事な午後の予定の前に10分、目を閉じる。休憩中はスマホを伏せて置く
- 夜:寝る1時間前に、仕事の画面を閉じる時刻を決める


